2011年8月1日月曜日

老司校区を知ろう 2

第2回 老司瓦窯跡・1

大宰府観世音寺の創建瓦を焼いたとされる老司瓦窯跡は福岡市南区老司4丁目に所在します。
 昭和11年(1936)年10月に道路工事中に発見され、九州帝国大学(現 九州大学)の鏡山猛氏による調査が行われたことを契機に周知されることとなりました。当時の記録によって老松神社の丘陵裾部に瓦窯跡1基が存在したことが伝えられてきましたが、生産遺跡としての瓦窯の規模や構造、範囲等は不明確のまま現在に至っていました。
平成18・19年度に実施されました発掘調査によって灰原を伴う地下式登り窯1基(1号瓦窯跡)を確認する事ができました。
 戦前の同調査や本瓦窯跡の北方約2.5kmに位置する三宅廃寺で採集された瓦は、戦後の小田富士雄氏の研究によって古代の大宰府系古瓦の祖形の一つに位置づけられ「老司Ⅰ式」という形式名のもと、古瓦研究における九州一円の重要な標識となっています。また、その後の九州歴史資料館を主体とする調査や研究により、この瓦の供給先は、天智天皇が母斉明天皇を弔うために建立を発願したと伝えられる太宰府観世音寺であり、かつ創建瓦であることも判明しています。
また、創建時期については、政治的な背景や文
献史料、関係文物等の解釈によって諸説ありますが、様々な要因によって造寺業の進展と中断を繰り返しながら、約60年の歳月をかけて天平18(746)年の完成に至ったことが小田氏によって明らかにされています。
 平成22(2010)年8月5日付で国史跡指定「観世音寺境内及び子院跡 附 老司瓦窯跡」として追加指定されました。

~老司瓦窯跡国史跡指定記念講演会資料参照~

<老司公民館だより 2011年8月号>